Withコロナでの新しいSaaS Pelotonを試してみた

Withコロナでの新しいSaaS Pelotonを試してみた

Clock Icon2020.10.19

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日本未上陸のホームフィットネスが面白い

WINEをこよなく愛するネクストモードの里見です。

新型コロナウイルスの影響もあり、米国では家庭でできる新しいフィットネスサービスが登場しています。

9月にアメリカではApple Fitness+登場しましたが、ジムを持たないフィットネスサービスであるClassPass(Airbnbのフィットネス版)など、たくさんの日本未上陸のサービスがあります。中でも特徴的なのは、サブスクリプションのサービスとデバイスを組み合わせたサービスで、Mirror(Lululemonが買収)、Tempo(人工知能でフォームの矯正)など、SaaSとデバイスを組み合わせたSaaS + a Boxと呼ばれるホーム・フィットネスが人気です。

今回は「SaaS + a Box」のひとつであるPelotonを、個人で輸入されている株式会社ジュート 代表取締役社長 森平さんにお願いして体験してみました。

Pelotonは、2012年にアメリカで創業した会社で(CEO:John Foley)2019年に上場しています。家庭内で使うエクササイズバイク($2,495=約26万円)とオンラインでエクササイズを受講できるサブスクリプションサービス($39/月=約4110円)をセットで提供しています。2020年5月現在で月額会員数は89万人いるようです。

 

We have 7,000 classes on-demand so we’re like the Netflix of fitness.

SaaS + a Boxモデルと言われていて、SaaSのビジネスモデルにリアルな物理デバイスが加わったビジネスです。SaaSビジネスではカスタマーサクセスが重要だと言われてますが、月のチャーンレート(退会率)はなんと驚異の0.46%です。日本のスポーツジムの月のチャーンレートは3~5%と言われているので、約10倍になります。これは、従来の日本のスポーツジムが幽霊会員で成り立っているのとは逆のビジネスモデルです。実際に使ってもらう回数を増やすことに力点を置いているはずで、より広範囲に、より長く顧客との関係を築く (カスタマーサクセス)仕組みがどんなものなのか、いつか体験してみたいと思っていました

Pelotonに触れてみた

Pelotonにログインすると、様々な人種、性別のインストラクターがレッスンをしています。ブラックやホワイトのインストラクターだけでなく、ゲイのインストラクターもいます。この中から自分の好みのインストラクターを選択します。

レッスンの内容にもバリエーションがあります。9種類の時間(5分、10分、15分、20分、30分、45分、60分、75分、90分)が選択可能で、内容の難易度も様々です。今回は体験しませんでしたが、マットを使ったヨガレッスン、有酸素トレーニング、瞑想、パワー系のトレーニング等、約10種目のレッスンがありました。ランニングについては、自転車とは別のデバイスが販売されているためか、今回の筐体では表示されませんでした。

使っている音楽の種別でも検索ができて、気に入った曲はレッスン中に左側にでるハートマークを押してSpotifyのお気に入りリストMy Pelotonに入れることができます。今回体験した環境では、イヤホンジャックからステレオにケーブルを繋いでいるため、クリアな音場で楽しむことができました。

すべて英語ですが、直感的に操作できるため、すぐにトレーニングがはじめられます。乗る前にサドルの高さや前後、ハンドルの高さを調整して、いざスタートです。

Pelotonを体験してみた

いろんなレッスンがあるのですが、今回は少し難易度が高いと言われるレッスンにチャレンジしてみました。普段から自転車に乗り慣れているため、たいしたことないだろうとなめてました。が、しかし、開始5分で既にフラフラになり、20分体験した後は汗だくで太腿がパンパンになりました。

 

 

経験してみて、インストラクターがすばらしいことに感動し、HANNAH FRANKSONのファンになりました。自転車のインストラクターでありながらHannahの鍛え上げた肉体は美しく、上半身から下半身に至るまで、素晴らしくトレーニングされています。彼女は次々と変わる曲をすべて記憶していて、テンポに合わせた的確な指示をだしてくれます。ときどき曲を口ずさんだり、踊るような仕草をしたり、トレーニングを飽きさせません。声がけ、煽り、褒め言葉にチアアップされ、どんどんテンションがあがります。

 

Image of Hannah Frankson

https://www.onepeloton.com/instructors/bike

ほんと、ただ自転車に乗っているだけなのですが、画面には推奨のケイデンス(脚の回転数)や負荷の値がどんどん変わり、ダンシング(立ちこぎ)の指示もあるためわりと忙しく、辛いのですが楽しく続けられます。インストラクターはずっと自分を見つめていて、特別に気にかけてくれているようで、あたかも自分がスタジオにいるかのような臨場感があります。もはやリモートであることを忘れて、すっかり没入です。

参加メンバーが誕生日の日には、名前を呼んだりもしてくれるようで、ファンエンゲイジメントが素晴らしいです。日本時間の夕方に実施したため、残念ながらライブではなくVODでの参加だったのですが、ライブだと自分のランキングの付近でトレーニングをしているメンバーにHigh Fiveを送れたりします。Facebookと繋がっていて、SNSでの参加者同士の交流も可能となっています。

また、自分が参加者の中で何位にいるのかもわかり、モチベーションに繋がります。消費カロリーや平均のケイデンスなど、たくさんの数字が表示されていて、いろんな観点から分析できるようになっています。

OVERALL RANKは1740/9147人

過去にトレーニングしたデータも細かく記録されていて、一定のレベルに達するとメダルがもらえるなど、飽きさせない仕組みが詰まっています。

UI/UXは日々改良されていて、内製のEngineerが顧客体験をなにより大事に考えて機能追加をしている様子がうかがえます。これだけの機能を搭載していて月に4110円であれば、かなり安いのではないかと思います。

部屋の中でただ自転車をこぐだけだから、すぐに飽きてしまうのではないかと思ってましたが、これなら続けられそうです(ただ、筐体はデカいです!)。かつてMINOURAの自転車トレーナーを買ったものの使わなくてすぐに売ってしまった経験から、家でのトレーニングはつまらないと思い込んでいましたが、楽しくてびっくりしました。

トレーニングマシンに惚れ込む

Pelotonはハードウェア、ソフトウェアだけでなく、物流やBGMまで、すべてを自社で内製して提供しているようです。今回体験した自転車ですが、SHIMANOのビンディングペダルが最初から搭載されています。

かなり大型の自転車であるため、安定してトレーニングをすることができます。ダンシング(立ちこぎ)しても自転車がひずむことがなく、ペダルに力を入れるとリアルなロードバイクの楽しさを感じられます。

負荷の変更はトップチューブの真ん中にある赤いノブの「変速機」を使います。これを右に回すとペダルが重くなり、左に回すとペダルが軽くなります。インストラクターの指示に従って「変速機」を回すのですが、これが無段変速になっていて、スムーズに負荷が変わります。普通の自転車であれば、「ガチャ」っとギアが変わりますが、滑らかに変わるので脚への負担がありません。また、緊急時にはこの赤いノブを押すとブレーキになり、回転が止まります。

自転車のトレーニングマシンはどうしてもリアルな自転車とは違う乗り心地になりますが、Pelotonはエレガントな乗り心地で安心して体を預けられます。風を切る爽快感やアスファルトの振動、タイヤのグリップ感はないのですが、それでも画面に集中してときどき体幹がブレた際にはフレーム全体が揺れて体のバランスを保ってくれます。重量のあるフレームは頑丈で「歪み」や「しなり」はなく、自転車全体に優しくホールドされている感じです。ハンドルの形状も良くできていて、本気でこぐときに握りを変えたり、疲れた時には肘をかけて体を休ませることができます。

アプリで室内トレーニングができるZwiftやCycle Visionもお手軽で良いのですが、ここまで室内トレーニングに特化したトータルなシステムははじめて出会いました。たとえて言えば、MicrosoftにはなくてAppleにはある、ひとつのあたらしい体験をPeletonは提供しています。音も静かで、スペースさえ確保できれば自宅にマジで買いたいです(日本に個人輸入する場合、輸送費を入れて60万ぐらい初期費用がかかるみたいです)。なお、米国での価格は下記となります。

https://www.onepeloton.com/shop/bike/compare

30日のフリートライアルが用意されています。

リモートだからできること

これだけの経験をさせてくれるのだから、Pelotonのインストラクターのギャラは高いのだろうと思って調べてみると、1回のレッスン(平均30分~45分)でなんと$500(約52,700円)稼ぐようです。年間では$300,000(3,160万円)以上稼ぐインストラクターもいるというので驚きです。相当狭き門で、厳しいトレーニングをされているんだと思います。今回体験したインストラクターも、1回のレッスンで1万人~5万人が受講していましたから、このギャラも頷けます。

ちなみに米国のジムのインストラクターは、Gold’s gym→$16~$40(約1,690-4,200円)/時間、24 Hour Fitness→$18~$28(約1,900-2,950円)/時間、SoulCycle→$130~(13700円)/クラスと言われています。

日本とは物価が違うので一概には言えませんが、日本のジムのインストラクターの薄給はテクノロジーで改善していきたいところです。

新型コロナウイルスの影響で日本のフィットネスジムは元気がないですが、リモートだからできることを考えて、お客様の立場でこれまでの仕組みを見直し、Pelotonのような新しい仕組みをクラウドで創っていきたいです。

 

※$円の為替は105.40 円(20201017)で計算しています。

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